「債務名義」を取られると、給料や家財道具は差し押さえられる?


債務名義

債権者が給料などを差し押さえるためには、まず「債務名義」を取る必要があります。
これは債権があることを法的に証明するもので、通常の借金の契約書はこれにあたりません。
「債務名義」となるのは、以下の3つです。

■裁判所の判決■公正証書■調停(和解)調書

■「判決」には「確定判決」、「仮執行宣言付判決」などいくつか種類がありますが、いずれにしても債権者自身が裁判所に訴えて審理をしてもらった上で出るものですから、債権者側には費用も手間もかかりますし、訴えてから1日2日で判決が出るものではありません。

■「公正証書」は公証役場の公証人が立ち会う形で作られる契約書のようなものです。本来は債権者・債務者が揃って公証役場に行く必要がありますが、委任状を託せば、どちらか一方だけが行っても作成することができます。
お金を借りたときや、返せなくなって債権者から「再契約」を持ちかけられた時に、「委任状」に署名させられたり、印鑑証明を渡している場合は、公正証書が債権者によって作成されている場合もあります。

■「調停調書」は、特定調停の結果が記されているものです。つまり、債務整理方法として「特定調停」を選んだ場合だけは、その和解結果が「債務名義」になってしまうということです。(「和解調書」は債権者の訴えに異議を申立て、通常の訴訟の後に和解した場合に取られるものです。)

強制執行(差し押さえ)

「債務名義」を得た債権者は、債務者の給与や財産を差し押さえることができますが、それも「思い立ったらすぐできる」というわけではありません。やはり必要書類を揃えて手続きを踏む必要があります。もちろん費用もかかります。
また、仮に債権者に差し押さえができる条件が整ったとしても、何でも持って行けるわけではありません。

給料の差し押さえ

給料が差し押さえられることになると、裁判所から会社に通知が行きます。
通知の内容は、「差押が決まったから送金してください」ということだけで、「債務整理するから」等、差押の理由が通知されるわけではありません
会社は差押分を差引いてから、あなたに給料を支払います。
差し押さえられても手元に「一銭も残らない」ということはありません。
・給料が44万円以上の人は、33万円を超える分だけが差し押さえられます。
・44万円未満の人は、給料の4分の1だけが差し押さえられます。
それ以上の差し押さえは禁止されています。
裁判所に破産や個人再生などの債務整理を申し立てた場合は、差し押さえができなくなりますが、中には弁護士の受任通知などが届き、債務整理に入ることを知ると、申し立てる前に少しでも回収をしようと、すぐに訴訟を起こしてくる業者もあります。
債務整理手続き準備中に訴状が届いた場合には、すぐに委任している弁護士に連絡をして、対応してもらってください。

預金口座の差し押さえ(債務と預金の相殺)

銀行に債務があり、同じ銀行の口座に預金が残っていれば、債務と相殺されます。給与の振込み先になっていれば、給与が入り次第、全額債務と相殺されてしまう場合もあり得ます。
これは債務名義を取った上での差押ではなく、銀行側の通常の債権回収の手段ですから、訴訟などを経る必要はありません。
ですから、債権者に銀行がある場合は、債務整理に入る前に、その銀行の口座の残高をゼロにしたり、解約しておいた方が無難です。給与振込みや公共料金等の引落し口座も、債務のない銀行に早めに変更しておいた方が良いでしょう。

家財道具の差し押さえ

テレビ、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、エアコンなどの家電製品の差し押さえは禁止されています。(同じものが2台以上ある時は1台を残して差し押さえ可能です)
禁止されていないものでも、運賃などは債権者持ちですから、余程高価なもの以外はまず差し押さえられるようなことはありません。
ですからパソコンも心配しなくて良いでしょう。(疑う方は、中古パソコンショップなどで自分のパソコンの買取価格を聞いてみてください。驚くほど安いです)

車の差し押さえ

車を差し押さえるためには、名義などの問題で手続きが複雑だったり、保管場所(駐車場)を債権者の方で用意しておかなくてはなりません。このため買ったばかりの新車以外は費用倒れになる可能性が高く、差し押さえられることは少ないようです。

★上記は、家財道具や車が「自分の名義である」ことを前提とした記述です。
まだローン支払い中の物はローンが完済するまでは、ローン会社の物です。
従って、ローン完済前に債務整理に入った場合は、債権者は差押の手続きをするまでもなく、ただちに返却を求めることができます。
土地・建物などの「不動産」は別途手続きが異なりますので、お持ちの方は専門家にご相談ください。